「光熱費換算値表示」(目安光熱費)をご存じでしょうか。光熱費換算値表示(目安光熱費)は、住宅の省エネ性能を光熱費に換算し、住宅情報提供サイト等で表示されます。今後は住宅も、車と同じように「燃費」を考慮して購入できるようになるでしょう。早ければ2022年に導入される予定で国が動き出しています。消費者にとっては住宅購入の際の目安が増え、住宅サイトの表示もよりわかりやすくなる方法です。本記事では、光熱費換算値表示(目安光熱費)とは何か、メリットや計算・表示方法などを解説します。
目次
光熱費換算値表示(目安光熱費)とは
光熱費換算値表示(目安光熱費)とは、住宅の省エネ性能を実費換算した数値のことです。住宅の省エネ性能は現在、建築物省エネ法に基づく設計一次エネルギー消費量やBELS(建築物省エネルギー性能表示制度)のような認証制度などによって提供されています。しかし、一般の消費者には分かりにくいため、より馴染みやすくわかりやすい表示を目指して省エネ性能を実費換算した光熱費換算値表示(目安光熱費)をすることになりました。
光熱費換算値表示(目安光熱費)は、車の購入をイメージすると分かりやすいでしょう。車を購入する際には、本体価格だけでなく燃費性能も見ます。住宅でも同じように燃費性を考慮し、省エネ性能で選べるようにすることを目的とし、省エネ性能の高い物件を選ぶよう消費者を誘導するのが光熱費換算値表示(目安光熱費)です。
光熱費換算値表示(目安光熱費)の検討の背景
光熱費換算値表示(目安光熱費)は、令和元年5月交付の改正建築物エネ法に盛り込まれた説明義務制度やトップランナー制度等の十分な効果の発揮と、パリ協定(2020年以降の気候変動問題に関する国際的な枠組み)の二酸化炭素削減目標を達成するために、消費者の省エネ性能に対する関心を高めることが必要不可欠との見解から検討が始まりました。
そのため、消費者が住宅の購入など住まい探しで利用する住宅情報サイト等を通じて、住宅にかかる光熱費を実費換算した光熱費換算値表示(目安光熱費)を導入し、省エネに対する意識を高め、誘導を図ることにしたのです。
経緯と今後のスケジュール
光熱費換算値表示(目安光熱費)は、改正建築物省エネ法における説明義務化や住宅トップランナー制度の対象拡大などが推進されることから、さらなる省エネ性能に対する関心を高めるために、今後以下のようなスケジュールが組まれています。早ければ2022年より光熱費表示を始めることとされているのです。
2020.8月下旬 | 第2回検討委員会 |
2020.10月上旬 | 第3回検討委員会 |
2020.10月中旬 | とりまとめ、プレスリリース |
2022.1-3月期 | 新築マンションでの「光熱費」導入 |
2022.4-6月期 | 新築戸建て分譲での「光熱費表示」導入 |
2022.10-12月期 | 賃貸での「光熱費表示」導入 |
光熱費換算値表示(目安光熱費)によるメリット
光熱費換算値表示(目安光熱費)によるメリットは以下の通りです。
- 世界でエネルギー消費量を減らそうという動きに貢献できる
- 消費者が住宅の省エネ性能を簡単に比較することができる
- 住宅購入を検討する時点でランニングコスト(ライフサイクルコスト)がわかる
光熱費換算値表示(目安光熱費)によって、住宅購入前に年間のトータルでかかる光熱費を知ることが可能です。光熱費は家族の人数によって異なり、世帯人数が増えれば水道光熱費も高くなります。そのため、家庭で負担する光熱費を事前に把握した上で、住宅の比較の検討することができるようになるのがメリットです。
世帯数 | 光熱費合計 | 電気代 | 水道代 | ガス代 |
---|---|---|---|---|
一人世帯 | 11.652 | 5.700 | 2.120 | 3.012 |
二人世帯 | 19.599 | 9.654 | 4.098 | 4.488 |
三人世帯 | 22.683 | 11.116 | 5.260 | 5.061 |
参考:家計調査 家計収支編 総世帯 詳細結果表 年次 2018年 | ファイル | 統計データを探す | 政府統計の総合窓口
また、近年、地球環境を守る活動が活発になってきているため、光熱費に対する意識が高まることにより、社会貢献することができます。
光熱費換算値(目安光熱費)の論点
「光熱費の実費」に置き換える光熱費換算値(目安光熱費)には、算出方法と表示方法があります。これらは論点として協議されているところです。また、燃料単価の設定や住宅ポータルサイトの表示においてもより消費者の立場に立ってわかりやすく見やすいものをと協議されています。
算出方法は以下のような前提があります。消費者に光熱費換算値(目安光熱費)を活用してもらうために利便性を高めるのが意図するところです。
- 誰でも計算が可能である
- 省エネ性能が公平・公正に比較可能であること
一方、表示方法は以下のような前提があります。
- 消費者の省エネ性能に対する関心を高められ、かつ、省エネ性能の換算値であることが誤解なく理解されること
- 創エネ分については、建築物省エネ法上の扱いと同様、自家消費相当分のみ考慮することとし、売伝分に関しては、別途併記表示すること
光熱費換算値(目安光熱費)の算出方法
算出方法はWebプログラムによって行われ、必要事項を入力するだけで光熱費換算値が計算できます。また、表示方法に関しても、一目でわかる形に掲載されるため、利用しやすいしょう。
光熱費換算値(目安光熱費)の表示方法
表示方法は検討段階のため、複数案が論議されています。いずれにしても、消費者にとって見やすいかどうかという視点に立って作成されています。以下、光熱費換算値(目安光熱費)表示の事例です。
①光熱費換算値のみ:70,000円
②★マーク併記A:70,000円(★★★) ※★はBELSの★表示と同一とする
③★マーク併記B:★★★(70,000円) ※★はBELSの★表示と同一とする
④削減額併記A:70,000円(-20,000円)
⑤削減額併記B:-20,000円(70,000円)
⑥②~⑤について、(括弧)内の情報の掲載は必須とする
⑦その他対案はあるか
光熱費換算値(目安光熱費)に必要な燃料単価の設定
燃料単価は以下のことを考慮して設定されます。
- 公正に比較可能であること
- メンテナンスしやすいこと、
- わかりやすい(誤らない)こと
- 省エネ性能との逆転現象が生じないこと 等
以下、燃料単価の事例です。
住宅情報サイトの広告画面表示
住宅情報サイトの広告画面表示では以下のようなイメージになります。
間取りや立地に加え、比較情報に光熱費換算値(目安光熱費)が加わり、新しい視点で住宅物件を検討することができます。ただし、省エネの義務化が進んでいない現状では実際に省エネ計算ができない家があります。そのような場合は、計算なしと掲載せずに「-(シーダ)」で表示されます。
省エネ住宅に関わる補助金事業
省エネ住宅を購入する際に利用可能な補助金事業の一例を紹介します。省エネ住宅は「地球環境にやさしい家」として購入費用の一部の補助金を受けることが可能です。省エネ住宅を検討する際は合わせて補助金事業を調べておくとよいでしょう。
- ゼロエネ住宅補助金 ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業
- ZEH対象住宅を新築や購入、リフォームする際に受けられる補助金制度です。4つのタイプがあり、それぞれ適用条件や補助金額が異なるので注意が必要です。
参考:ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業(経産省ZEH)
- エネファーム設置補助金
- 家庭用燃料電池システムである「エネファーム」を導入した住宅を対象にした補助金制度です。指定機種や使用年数の条件があり、クリアすると補助を受けられます。
参考:エネファーム設置工事
- 長期優良住宅化リフォーム補助金
- 長期優良住宅を購入、または長期優良住宅化リフォームをする際に受けられる補助金制度です。省エネ性の他、耐久性や維持の点が審査の対象となります。
その他、自治体が実施する補助金事業もあります。補助金事業は申請期間があるため、詳細は各自治体ホームページや自治体窓口で調べましょう。
まとめ
光熱費換算値表示(目安光熱費)は、これから住宅購入における参考材料になります。地球温暖化問題や省エネ問題を考えることにもつながるため、ぜひ意識しておきたいことです。住宅購入は大きな買い物なので、参考になる指標は多いほど役立つでしょう。