工務店社長の年収相場|社員・役員報酬相場も合わせて紹介

工務店を開業するにあたって、決めなければいけないことのひとつに「社長の年収」があります。自身が経営する会社であることため好きに決めても良さそうですが「業績」「税務」「人件費」などを考慮しておかないとあとで困ったことに直面するかもしれません。今回は、工務店の社長がいくらもらっているのか、相場や年収を決めるポイント、注意点をご紹介します。

工務店社長の年収相場

「工務店」という縛りでの社長の年収相場に関する情報はありませんでした。しかし、社長の給与は一般的に「役員報酬」に分類されるため、以下の中小企業の資本金別役員報酬平均が参考になるでしょう。

資本金平均
2,000万円未満605万円
2,000万円以上851万円
5,000万円以上1,094万円
1億円以上1,392万円
10億円以上1,561万円

資本金2,000万円の会社でも平均で605万円程度です。工務店を開業する際は、500万円以上の工事を請け負う場合に必要な建設業許可を取得する必要があります。また、資本金を1,000万円未満に設定することにより、設立後最大2年間の消費税が免除になるメリットがあります。

そのため、会社の規模にもよりますが、中小規模の工務店であれば資本金を500~1,000万円未満にしている可能性が高いはずです。つまり、ほとんどの工務店の社長の平均年収は605万円前後と考えて良いでしょう。

工務店社長の年収を決めるポイント

工務店社長の年収を決めるポイントはいくつかありますが、以下の点は重要です。

  • 業績が順調
  • 税務対策
  • 人件費とのバランス

工務店社長の年収を決めるには「会社の経営状態」「税金・人件費のバランス」を考慮する必要があります。社長は自分の給料を好きに決めることができますが、自分だけが高い給料を得ようとして額を決めてしまうと、従業員から不満の声が上がるでしょうし、経営が傾く可能性さえ出てきます。また、税金面でも損をする可能性が出てくるでしょう。そのため、年収は上記3つのポイントを押さえた上で決めるようにしましょう。

業績が順調

社長の年収=役員報酬は、基本的に事業年度の途中で増減することはできません。毎月一定額が支払われることになるため、業績が「順調かどうか」また「順調にいく見込みがあるか」を見極めることは年収を決める際に非常に重要な考慮要素になってきます。

業績が思わしくないのに社長の給与が多い、という状況は従業員からすれば不満でしょう。特に社長だけが高い給与を得ており、従業員の給与が低いとその不満はさらに大きくなることは目に見えています。反対に、業績が順調な年度であれば、少し上乗せしても良いでしょう。

税務対策

社長の年収を決める上で税務対策は外せない問題です。社長の年収=役員報酬には、以下の4つの税金がかかってきます。

  • 所得税
  • 住民税
  • 社会保険料
  • 法人税

たくさんお金が欲しいからといって役員報酬を高く設定してしまうと「所得税」「住民税」「社会保険料」の負担が重くなります。反対に役員報酬を下げて会社に利益を多く残すと「法人税」が高くなるのです。

役員報酬を増やすにしても減らすにしても何らかの税負担が大きくなるため「節税にはこれ!」といった決まった解決策はありません。工務店の財務状況によりケースバイケースとなるので、お金のプロである税理士に相談することをおすすめします。

人件費とのバランス

業績の割に役員報酬が高すぎると従業員から不満が出てきます。反対に従業員の給与を増やしすぎると会社の経営が成り立たなくなるでしょう。

役員報酬を決める上でおすすめなのが「付加価値配分比率」という指標です。付加価値とは、簡単にいうと会社の利益のことです。そのため、付加価値配分比率とは「会社の利益をどのように分配するか」ということになります。下記の表が一例として参考になるでしょう。

【付加価値配分比率表】

付加価値100100100
役員25%40%50%
社員75%60%50%
産業の種類労働集約型標準知識集約型
労働分配率(=人件費)70%40%30%

例えば、労働集約型の会で付加価値が5,000万円だった場合、役員報酬は1,250万円、全社員の給料総額が3,750万円になります。しかし、全て分配してしまうと会社にお金が残らないため、役員報酬は最低でも折半する必要があります。そのため、最終的にもらえる役員報酬は1,250万÷2=625万円です。

工務店社員の年収相場

社長の年収相場に引き続き、社員の年収相場に関する情報も公的なデータは見当たりません。しかし、転職サイトdodaに登録されている「株式会社福岡工務店」の年収相場は、男性が534万円、女性が365万円となっています。

工務店と一口に言っても従業員数が2~3人の小規模工務店から数百人を抱える大規模工務店まで様々です。株式会社福岡工務店は従業員数30人前後の会社であるため、中規模もしくは小規模に分類されるでしょう。本記事を参考にされる工務店経営者の多くは、小~中規模工務店を経営していることが予想されるため、株式会社福岡工務店は一例として参考になるのではないでしょうか。

工務店の役員報酬とポイント

役員報酬を決める上で注意したいポイントが3つあります。

  • 毎月同額支給であること
  • 設立日から3ヶ月以内に決めること
  • 変更は事業年度開始から3ヶ月間のみ

役員報酬は、理由なく変更することができません。変更可能な時期は、事業年度が始まってからの3ヶ月間となり、年に1回のみです。事業年度開始から3ヶ月以降に変更することもできますが、意図的に税金を押さえることを防ぐために増額分は損金として算入ができないようになっています。

減額についても基本的には認められていませんが「著しい経営状況の悪化」や「免れない理由による役員変更」など認められるケースもあります。

また、役員報酬を損金として算入するためには以下の条件を満たす必要があります。

  • 定期同額給与
  • 事前確定届出給与
  • 業績連動給与

つまり「会社の業績に連動」させた「一定額を毎月」振り込んで、さらに「事前に申請した時期に申請額」をボーナスのような形で支給していれば、損金として算入可能です。

まとめ

工務店社長の年収は「このくらい欲しい!」というように単純に決めて良いものではありません。業績・税金・人件費など各方面に気を配る必要があります。最終的に社長の年収は、社長自身の采配しだいで決まります。「会社をどのようにしたいのか」という将来像と相談しながら年収を決めましょう。

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