近年、高齢化や子供の成長をきっかけにリフォームやリノベーション工事のニーズは高まっています。しかし、リフォームやリノベーション工事には国や自治体が行う補助金制度や税制の優遇措置をうまく活用できていない人もいるのではないでしょうか?そこで本記事では、補助金が出るリフォームの事例やリフォームに使える補助金や補助金の種類、優遇制度について解説します。
目次
リフォーム・リノベーションは補助金が出る
リフォーム・リノベーション時に補助金(助成金)が受けらえる制度があります。補助金制度の目的は、工事費の一部を補助することで、国や地方公共団体が推進する高品質な住宅を普及させること等です。補助金は、国から交付される場合と地方公共団体から交付される場合とがあり、それぞれ対象となる工事や期間は様々あります。
リフォーム・リノベーションを検討する時は積極的に利用したい制度ですが、補助金を受けるには以下の点に注意が必要です。
- 補助金には申請のタイミングや期間がある
- 補助金が受けられないリフォーム会社もある
補助金には実施前の事前申請が必要です。基本的には工事中や工事完了後では申請しても受理されないため、注意しましょう。また、補助金の申請にはタイミングの他に受付期間にも気を配ることも大切です。補助金申請はいつでもできるものと受付期間が決まっているものとがありますが、たいていの場合、国や自治体が設定する「予算」が上限に達すれば、受付期間中であっても締め切られてしまいます。 自治体実施の補助金制度では、適用条件として業者を指定されることがあります。例えば「自治体内にあるリフォーム会社を利用する」等制限を設ける場合が多いです。そのため、指定業者以外で工事を行うと仮に工事内容の条件を満たせていても補助金対象になりません。補助金を確実に受けるために事前にお願いする業者が補助金適用なのかどうか調べておくことが大切です。
国が行う補助金支援
国が主導し、全国で利用できる補助金支援には以下のようなものがあります。なお、国主導の補助金事業は多数ありますが、ここでは代表的な例をご紹介します。
- 介護リフォーム・バリアフリー
- 長期優良住宅化リフォーム推進事業
- ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業(経産省ZEH)
- エネファーム設置工事
バリアフリー工事や高性能住宅へのリフォームやリノベーションを検討する場合に使いやすい制度が多いと言えます。なお、予め設定された予算の上限を達した時点で締め切られる場合もあるので注意してください。
介護リフォーム・バリアフリー
介護リフォーム・バリアフリー工事で最も使いやす補助金は介護保険制度を使う方法です。介護保険制度には「居宅介護(介護予防)住宅改修費」という項目があり、玄関や浴室、トイレのバリアフリー工事をするうえで、被介護者が暮らしやすい家、介護者の負担を軽減する家、将来的に暮らしやすい家への改修工事に対して補助金が支給されます。
補助金の概要は以下の通りです。
- 補助金受給の条件
- 「要支援」または「要介護」の認定を受けた人が住む住宅であること
- リフォームを実施する住宅が、被保険者証の住所と一致していること
- 本人が実際に居住していること
- ケアマネージャーや福祉環境コーディネーター2級以上等、有資格者が作成した「理由書」が必要
- 補助金の利用
- 工事費用最高20万円を限度に費用の9割まで(支給額18万円)を支給
- 工事費が20万円を越えた場合、1割の2万円+超過した金額を負担
- 補助額の割合は所得に応じて変動
- 1回分の補助金20万円を数回に分けて利用可能
- 被保険者の転居、要介護区分が3段階以上進行した場合、再度20万円まで受給可能
- 補助金支給までの流れ
- 工事前の承認申請→承認→施工→工事終了→補助金の支給申請→補助金支給
- 補助金対象の主な工事
- 手摺の取付け(廊下・階段・玄関・トイレ・門から玄関までのアプローチ等)
- 床の段差解消(リビング・トイレ・浴室・玄関・通路の段差、スロープの設置等)
- 滑り防止や移動の円滑化のための床材変更(浴室や階段等で使われる滑る床材から変更)
- 引き戸等への変更(開き戸を引き戸やアコーディオンカーテン等に変更)
- トイレ等の取り換え(和式から洋式へ変更)
- 上記工事に必要な付帯工事
長期優良住宅化リフォーム推進事業
長期優良住宅化リフォーム推進事業は「既存住宅の性能向上や三世代同居対応リフォームによって子育てしやすい環境を整備していくこと」を目的とする事業です。事業目的に合致した既存住宅のリフォーム工事に対して国が費用の一部を補助します。事務所や店舗等住宅以外の建物は対象外です。また、補助金にはリフォーム後の住宅性能タイプによって段階的に補助金額が変動します。
補助金の概要は以下の通りです。
- 補助金受給の条件
- 一定の耐震性が確保されること
- 工事前にインスペクション(専門業者による現況調査)を行うこと
- 補助金の利用
- 対象費用の1/3を補助
- 補助金限度額は一戸当たり100万~250万円まで ※住宅性能タイプの度合いにより異なる
リフォーム後の住宅性能タイプ | 特徴 | 限度額 |
---|---|---|
評価基準型 | 耐久性・耐震性・省エネ性が一定水準を満たす | 100万円 |
認定長期優良住宅型 | より高い耐久性・耐震性・省エネ性を満たす | 200万円 |
高度省エネルギー型 | 認定長期優良住宅型により、さらに高省エネを満たす | 250万円 |
※三世代同居改修工事実施の場合、上記の金額に50万円が加算されます。
- 補助金支給までの流れ
- 通年申請タイプ(随時交付申請)
- 事前採択タイプ(事前に公募・採択した上で交付申請を受ける)
- 申請の手続きを行うのは基本的に居住者ではなく施工業者
- 補助金対象の主な工事
- 一定の性能向上を満たす改修工事(バリアフリー工事・耐震工事、省エネルギー設備の導入、維持管理しやすい作りへの変更等)
ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス支援事業(経産省ZEH)
使うエネルギーと創る(発電する)エネルギーがほぼ同一になる住宅をZEH(ゼロ・エネルギーハウス)と言います。快適性を向上し、光熱費や二酸化炭素排出といった住宅にかかる負担を削減するというメリットがあります。そして、環境を配慮した戸建住宅に対して補助金が設定されています。ZEHに対する補助金支援はどちらかというと新築住宅向きですが、リフォームにも適用可能です。
なお、ZEHには以下3つのタイプがあります。
- ZEH 支援事業
- ZEH+ 実証実験
- ZEH+R 強化事業
住宅のタイプにより申請できるタイプが異なりますが、ここでは最もシンプルな「ZEH 支援事業」をご紹介します。
補助金の概要は以下の通りです。
- 補助金受給の条件
- 一戸建て対象
- ZEHビルダー/プランナーによって設計・建築・改修された住宅
- ZEHロードマップの「ZEHの定義」を満たす
- 補助金の利用
- 一戸あたり60万円(定額)
- 蓄電システムを設置する場合、追加で20万円を補助
- 補助金支給までの流れ
- 公募説明会参加→一般公募(1~3次まで)→審査→交付決定→事業開始→実績報告→支給決定
- 補助金対象の主な工事
- ZEHの要件を満たす工事
- 住まいの断熱性、省エネ性能を上げる工事や、太陽光発電設備の工事等が対象
エネファーム設置工事
水素と酸素から電気と熱をつくる家庭用燃料電池システム「エネファーム」を導入予定の人やリースでシステムを提供する人に対して購入資金の購入資金の一部を補助金として支給する制度です。
補助金の概要は以下の通りです。
- 補助金受給の条件
- 一般社団法人燃料電池普及促進協会(FCA)指定の機器システムのみ
- 中古品は対象外
- モデルハウスでデモのために運転していた機器であっても補助対象にならない
- 6年間以上継続利用する義務
- 補助金の利用
- 定額補助:1台あたり0~4万円
- 追加補助:既築・LPガス対応・寒冷地仕様・マンション それぞれ1台あたり3万円(重複加算可能)
- 補助金支給までの流れ
- 補助金申込・交付申請書の提出→交付決定通知書の受領→設置工事後、補助事業完了報告書(兼取得財産等明細表)提出→審査→補助金の額の確定通知書受領
自治体が行う補助金支援
国だけではなく各自治体でも補助金支援制度が用意されています。各自治体では人口減少よって伸び悩む税収に対して各種の補助金支援事業を展開しているのです。自治体ごとで様々な特色ある制度がありますが、主に太陽光発電を導入した省エネ化、バリアフリー化、耐震化、防災対策等の工事に対する補助金の設定が多い傾向にあります。
以下、3つの自治体の事例をご紹介します。
- 東京都世田谷区
- 埼玉県草加市
- 大阪府吹田市
なお、自身の自治体にどんな制度があるか簡単に調べる方法に住宅リフォーム推進協議会の検索機能があります。
事例1 東京都世田谷区
世田谷区には「世田谷区環境配慮型住宅リノベーション推進事業補助金」という補助金支援制度があります。世田谷区民及び世田谷区にある管理会社が所有する住宅の省エネやバリアフリー工事が工事対象です。一戸建て住宅、分譲マンションや賃貸住に利用できます。
- 補助金支給の条件
- 区内に住民登録がある者で、特別区民税の滞納がない者
- 施工業者は世田谷区内に本店または支店を置くリフォーム会社
- 対象工事
- 省エネルギー化(窓・壁等の断熱化工事、省エネ設備の設置)
- バリアフリー化(分譲マンション共用部改修におけるLED照明器具や段差解消、手摺取付)
- 補助金額
- 上限20万円とし、工事費用の10%を補助
- トイレ/台1万8,000円、高断熱浴槽/台7万円、高効率給湯器/台2万円
- 上限40万円とし、工事費用の20%を補助
- 区の耐震改修工事の助成と併せて受給する場合
- 上限20万円とし、工事費用の10%を補助
- 補助金支給までの流れ
補助金の手続きの流れ を参照
- 受付期間
- 受付期間から予算状況に応じて終了
- 工事期間
- 補助金交付決定後に着工
- 令和3年3月末日までに工事を完了及び完了届の提出できる工事
事例2 埼玉県草加市
草加市には「草加市地球温暖化防止活動補助金」という補助金支援制度があります。本制度の目的は、自然エネルギー等を有効活用し、環境への負荷を減らす「地球温暖化防止活動」を推進する市民を支援することです。草加市内の居住済みもしくは居住する予定の住宅に設置される対象設備に対し、経費の一部を補助します。
- 補助金支給の条件
- 区内に住民登録がある者で、市税の滞納がない者
- 実績報告書の提出時、市内居住で住民基本台帳に記録されている者
- 過去に同じ設備で交付を受けていない者
- 1ヶ月エコライフチェックシートを実績報告時までに提出する者
- 補助対象設備
- 太陽光発電システム/太陽熱利用給湯器/地中熱利用給湯器/家庭用コージェネレーションシステム/燃料電池給湯器/HEMS、家庭用蓄電池/雨水貯留施設/次世代自動車(電気自動車、燃料電池自動車、プラグインハイブリット自動車)
- 補助金額
- 太陽光発電システム(設備出力1kW以上):一律7万円
- 太陽熱利用給湯器/地中熱利用給湯器/家庭用コージェネレーションシステム/燃料電池給湯器/家庭用蓄電池/次世代自動車:一律2万円
- HEMS:一律1万円
- 雨水貯留施設:要した費用の1/2、上限1万円
- 補助金支給までの流れ
- 手続きフローを参照
- 受付期間
- 令和3年2月1日までを申込受付期間
- 受付期間から予算状況に応じて終了
- 重複申請可能
- 工事期間
- 令和3年3月31日までに購入・設置、事務手続きの全てが完了する工事
事例3 大阪府吹田市
吹田市には「危険ブロック塀等撤去等補助金」があります。地震発生時の倒壊によって起こる人的被害を防ぐために、道路等に面するロック塀等を対象として、その撤去や高さを変更する工事の経費の一部を補助する制度です。なお、補助対象外となるケースもあるので注意しましょう。
- 補助金支給の条件
- 個人または法人の所有者(区分所有の場合は管理組合)
- 補助対象工事
- 危険ブロック塀等を撤去する工事
- 撤去後に代替フェンス等を設置する工事等を設置する工事
- 補助金額
- 危険ブロック塀等の撤去費
- 限度額15万円とし、下記の少ない方の金額
- 危険ブロック塀等の撤去に要した費用の4/5
- 危険ブロック塀等の延長1mにつき15,000円
- 限度額15万円とし、下記の少ない方の金額
- 代替フェンス等の設置費
- 限度額25万円とし、下記の少ない方の金額
- 代替フェンス等の設置に要した費用の1/2
- 代替フェンス等の延長1mにつき25,000円
- 限度額25万円とし、下記の少ない方の金額
- 生垣設置事業助成金等交付制度と併用可能
- 危険ブロック塀等の撤去費
- 補助金支給までの流れ
- 受付期間
- 令和5年(2023年)3月31日まで
- 年度予算の範囲内での補助事業のため、先着順
- 契約前に申請
リフォーム減税支援制度
住宅のリフォーム・リノベーションを行う際に補助金以外にも減税支援を受けることが可能です。減税支援には以下のようなものが挙げられます。また、減税以外にリフォーム資金の「贈与税の非課税措置」もあります。
- 所得税の控除
- 固定資産税の減税
- 登録免許税の軽減
- 不動産取得税の特例措置
上記の優遇措置は工事内容や税率、別の税制優遇との併用可否が決められており、また申請先や期限も異なります。しがたって、工事を検討する前にしっかり確認することが大切です。ホームページ以外に直接リフォーム会社に問い合わすのも良いでしょう。
長期優良住宅化リフォーム減税
長期優良住宅化リフォームに対する減税措置は以下3タイプあります。実施した場合、下記の3パターンの減税措置を受けることが可能です。ローン型減税や投資型減税は適用要件があるため、一般社団法人住宅リフォーム推進協議会のホームページなどで最新情報を確認しましょう。
- 所得税 投資型
耐震改修工事もしくは省エネ改修工事と合わせて一定の耐久性向上リフォームをし、既存住宅の長期優良住宅の認定を受けた場合に適用されます。工事費相当額の10%が1年間(リフォーム後に住み始めた年のみ)、所得税から最大25万円の控除を受けられます。なお、太陽光発電設備を設置する場合や、耐震改修工事や省エネ改修工事、バリアフリー工事、同居対応リフォーム工事をあわせて行う場合には、限度額が増額されるのが特徴です。
- 所得税・ローン型
5年以上の住宅ローンを借り、特定の省エネ改修工事と一定の耐久性向上リフォーム工事をした場合に利用できる制度です。耐久性向上工事は250万円までのリフォーム費用で2%の控除、その他のリフォーム工事は750万円までを対象に1%の控除を受けることができます。リフォーム後、居住開始した年から5年間で最大62.5万円まで控除されます。
- 固定資産税
一定の耐震改修工事もしくは省エネリフォーム工事をした場合に減税措置が受けられます。耐震リフォーム工事、または省エネリフォーム工事を行った中古住宅が長期優良住宅の認定を受けた場合、リフォーム完了年の翌年度分に限り、家屋の固定資産税額が減税されます。なお、1年間で120㎡相当分までを上限とし、3分の2が減額されます。また、リフォーム工事費用が50万円以上であることなどが要件です。
【場所別】リフォーム補助金
よく行われるリフォーム工事についての補助金支援制度は以下の通りです。
- 浴室
- 介護保険
- 長期優良住宅化リフォーム推進事業
- 各自治体による補助金
- トイレ
- 対象の補助金制度
- 介護保険
- 各自治体による補助金
- 玄関ドア
- ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(経産省ZEH)
- 長期優良住宅化リフォーム推進事業
- 各自治体による補助金
- 屋根
- 長期優良化リフォーム推進事業
- 各自治体による補助金 ※補助金対象になるリフォームは、太陽光発電システムやバリアフリー、耐震、省エネ等に関わるものです。
国や自治体それぞれで独自の補助金制度が用意されていますが、工事内容やもらえる金額に違いがあるため詳しくは補助金制度を所管先のホームページで確認することをおすすめします。
まとめ
リフォームやリノベーション工事で活用できる補助金制度は、国や各自治体でそれぞれ適用条件や補助額が様々ですが、早めに調査しておけば工事費用を抑えることができます。しかし、補助金制度は申請期間内でも予算に達した時点で打ち切られる可能性があります。そのため「せっかく諸々の書類を準備したのに補助金が下りなかった」ということにならないようにするためにも、早めに国や自治体のホームページで調べ、補助金制度に詳しいリフォーム会社に相談してみることをおすすめします。