工務店経営の戦略~中小工務店が淘汰される時代を生き残るために

工務店経営の戦略

今、中小工務店は岐路に立たされています。工務店経営者の高齢化・後継者不足が急激に進み、今後、倒産や廃業が相次ぐのではないかと見られているのです。また、工務店の経営が難しくなる要因は、高齢化による後継者問題だけにとどまりません。中小工務店が淘汰される時代を生き抜くために、経営戦略として実行すべきことを見ていきましょう。

中小工務店は淘汰の時代を迎える?

地域に根ざした中小工務店の倒産は少なくなく、倒産や廃業による淘汰の時代を迎えようとしています。一戸建てを中心に請け負う工務店が倒産するケースのみならず、東京都葛飾区の保育所の建設を請け負った工務店が倒産するなど、公共工事を受注する工務店までが倒産しているのです。
なぜ、工務店が淘汰の時代を迎えているのか、これまで事業を一人で牽引してきた創業社長の高齢化や後継者不足、人手不足など、中小の工務店が直面している問題をもとに解説していきます。

社長の高齢化と後継者の不在

帝国データバンクの「全国社長年齢分析(2019年)」によると、社長の平均年齢は1990年では54歳でしたが、2018年には59.7歳になり、高齢化の進行が見て取れます。建設業の社長の平均年齢も59歳と高齢化が進み、年代別に見ると60代の社長が29.6%と最も多く、70代の社長も17.3%います。

【建設業の社長年代構成比】
●参考:帝国データバンク「全国社長年齢分析(2019年)」

社長の年齢割合
30歳未満0.1%
30代3.4%
40代20.8%
50代26.1%
60代29.6%
70代17.3%
80歳以上2.8%

さらに、帝国データバンクの「2017年後継者問題に関する企業の実態調査」によると、建設業の後継者不在率は71.2%とサービス業に継ぐ高い水準で、後継者問題が深刻化しています。
中小工務店では、取引先の開拓から経理や財務に至るまで、社長が一手に担っていたケースが少なくありません。後継者を育成していない状態で、社長が病に伏したり、亡くなったりしてしまうことで、経営が立ち行かなくなることが懸念されているのです。

慢性的な人手不足

慢性的な人手不足

後継者問題に限らず、大工の高齢化問題も工務店にとって死活問題です。大工の人数は国勢調査によると、2015年の時点では35万人とされていますが、2030年には21万人にまで減少することが野村総合研究所によって試算されています。
大規模な建築物を造る現場では、建設機械やロボットの活用によって業務効率化を図り、人手不足を解消する動きが進められています。しかし、木造住宅を主軸とする工務店では、建設機械やロボットの活用による省力化は難しいものがあります。工務店は大工が確保できないことによって、人手不足倒産に陥るリスクを抱えているのです。

住宅着工件数の減少

住宅着工件数の減少

新築住宅の着工件数の減少も、工務店にとっては大きな痛手となります。野村総合研究所が予測した「2019~2030年度の新設住宅着工戸数」によると、新設住宅着工戸数は、2018年度の95万戸ありましたが、2025年度には73万戸、2030年度には63万戸へと減少していくことが見込まれています。また、リフォーム市場も横ばいとされていることから、工務店にとって厳しい時代が来ることが想定されるのです。

これまで以上に注視される経営状況

工務店が淘汰される時代が到来することが見込まれ、実際に倒産する工務店も出てきている現在では、発注元からこれまで以上に経営状態がチェックされることが想定されます。

【発注元からチェックされるポイント】

  • 建設業の許可の取得
  • 建設業許可申請書の閲覧制度の利用による工事実績や財務諸表
  • 建設業の経営事項の審査の評点
  • 商業登記の取得による役員の頻繁な退任や解任の有無
  • 公表されている住所での事業実態及びNTTの電話番号案内への登録
  • ホームページの開設と最新の内容への更新状況
  • インターネットによる口コミ情報

これらの点が見られているのかを知っておき、対策を立てておくことが大切です。

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2019年9月4日

淘汰の時代を生き残るために

工務店の淘汰が進む時代に生き残るための対策として、中小規模工務店に求められる経営戦略の考え方を解説したうえで、4つのステップを紹介していきます。

【工務店がこれからの時代を生き残るための対策】

  1. 自社の強みと弱みを明確化する
  2. 自社の強みと弱みからターゲットを設定
  3. ターゲットに「見つけてもらう」工夫
  4. 見込み客の獲得率を高める

中小規模工務店に求められる経営戦略

経営戦略

住宅業界は他の業界と大きく異なる特徴があります。たとえば、自動車メーカーは百万円から数百万円、さらには数千万円といった商品を扱いますが、ほとんど大手企業だけで占められています。一方、住宅業界も1,000万円程度から数千万円といった住宅を手掛けますが、中小規模工務店からパワービルダー、ハウスメーカーまでがしのぎを削り、企業規模は様々です。
住宅の場合、大手が供給する大量生産される住まいを求める人だけではなく、発注者のニーズに合った個別生産を求める人もいることが、その要因です。また、企業規模と品質は必ずしも一致せず、質の高い住宅を手掛ける中小規模工務店も多くあります。つまり、個別生産を求める顧客に対して、自社の強みを活かすことがこれからの経営戦略には必要と言えるでしょう。

自社の強みと弱みを明確化する

戦略目標を立てるためには、まず、自社の長所と短所を知ることが大切です。その有効な方法として、SWOT分析が挙げられます。

SWOT分析

SWOT(スウォット)分析とは、自社でコントロールできる内部環境と、自社でコントロールできない外部環境をプラス要因とマイナス要因にから分析することで、課題や今後の戦略を明確化するものです。
Strength(強み)・Weakness(弱み)・Opportunity(機会)・Threat(脅威)の頭文字から、SWOT分析と名付けられています。Strengthは、技術力など目標達成に貢献する自社の特徴。Weaknessはコストが高い、人手不足といった目標達成の妨げとなるような自社の特徴。Opportunityは ビジネスチャンスとなるような機会、Threatは競合他社の動きや社会情勢の変化などを分析します。
自社の本当の強みとは何か。独りよがりの考え方からではなく、地域の競合他社などとの比較なども踏まえ分析しましょう。

自社の強みと弱みからターゲットを設定

ターゲットを設定

自社の強みと弱みを把握したら、次は自社が選ばれるようなターゲットを絞り込む段階になります。想定すべきターゲットとは、自社の強みに合い、自社の弱みをさほど気にしない人です。
まずは、家を建てることを検討している層から、年齢や性別、職業、年収といった属性を始め、新築か建て替えか、土地を持っているか持っていないか、ライフスタイルへのこだわりはあるかといった点からターゲットを絞り込みます。ターゲットを絞るのはもったいないことではなく、顧客に選ばれるためには必要です。

そして、ターゲットが決まったら自社はどういう立ち位置をとるのか、ポジショニングを決めることが必要です。たとえば、スタイリッシュなデザインの住まいを造る工務店であれば、設計力やデザイン力がある工務店というポジションです。年収が高い人をターゲットにするにも関わらず、安い価格で家を造れる工務店では、ターゲットとポジショニングが合いません。そして、ポジショニングに合った露出戦略を取ることでブランディングにつながっていきます。

ターゲットに「見つけてもらう」工夫

ターゲットに「見つけてもらう」工夫

中小規模工務店が、総合展示場への出店や広告展開による資料請求といった従来の住宅業界の手法だけで顧客を獲得するのは、コストやマンパワーの面から難しいものがあります。また、インターネットで様々な情報を得られることや嗜好の多様化によって、顧客からの紹介も得られにくくなっています。そのため、ターゲットに見つけてもらうには、これまでの集客チャネルに限定されない工夫が必要です。
たとえば、デザイン力をアピールするのであれば、InstagramなどSNS経由でデザイン性の高い住宅の施工事例を紹介するなど、ターゲットに応じたweb戦略を取ることにより、費用をさほどかけずにターゲットにアプローチすることができます。

ホームページ・WEBを活用した工務店の集客手法

ホームページ・WEBを活用した工務店の集客手法【SEO・SNS・MEO】

2019年9月6日

見込み客の獲得率を高める

見込み客から受注を獲得したり、リピートで受けたりするためには、信頼関係を構築することが大切です。そのためにできることをまとめました。

【見込み客の獲得率をアップする方法】

  • 自社の施工事例を資料として渡す
  • 打合せ時に取り決めた事項や確認事項を議事録に残しておく
  • 不明な点などの質問に対して、業界の慣習を押し付けて回答を避けるようなことは避け、専門用語は噛み砕いて話すなどわかりやすく伝える
  • 社員だけではなく、協力業者の職人のお客様に対する対応を教育する
  • 現場の整理整頓や掃除を徹底する

まとめ

経営者年齢の高齢化による後継者問題や人手不足、住宅着工の着工数の減少などにより、工務店が淘汰される時代がやって来ようとしています。しかし、手をこまねいているのではなく、会社としての体力があるうちに次の一手を考えた工務店が生き残れるはずです。経営戦略を見直して生き残る工務店、更なる成長を遂げる工務店を目指していきましょう。

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